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前回の日記で書いたクリスマス話、何でかまだ続きます。
明日は急遽河口湖へ行くことになったので、寝ます。すいません。
連載日記になってしまった。。
明日帰ってきたら続き書いてあげますー。




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 てくてくてく、とクリスマスの計画を練りながら歩いていたサンジは、はっと気がついた。改めて指を折ってクリスマスまでの日数を数える。きっかり五日だ。
(いや、これはさすがに急じゃねェか・・・?)
 自分たちですら、そわそわする日数だ。本家のサンタのジジィ共はおもちゃの手配やトナカイのウォーミングアップで昼も夜もなく働いているはずだ。そんなときに、大丈夫であろうか。
 サンジは急に焦った。
 この船での初めてのサンタとなった年に、万一があってはいけない。しかし自分も小人になった以上、小人の役割というものがある。小人はサンタより出てはいけない。サンタはクリスマスの影の主役なのだ。
 どうする、どうする、と拳の上に顎を乗せて考え込み、ウロウロとその場を何回か回ってみる。こんな時に小人にも助っ人がいりゃあ、と思って、重要な存在に気がついた。
(マリモだ、あいつが平時に役に立つ滅多にないチャンスだ!)

 サンジは走った。走って展望台へ昇り、案の定トレーニング真っ只中のゾロを見つけた。
「おいクソゾロ!頼み事だ!」
「五千五百五十五」
 せっかくサンジが走ってきたというのに、ゾロは逆立ちをしながら足の裏でバーベルを持ち上げ、さらに腕立て伏せをしながら、人間離れした訓練の数で返事をしただけだった。
「オイ・・・俺がわざわざ頼みがあるつってんのにお前はその筋肉と戯れる気しかねェってのか」
「・・・おかしな言い方すんな。つーか頼み事のある奴は人をクソとは言わねえ」
「おう、一大事なんだ」
「・・・・・・」
 聞いてない。というかまったく噛み合ってない。そのことにも気付いていない。ないないづくしの状況にゾロは慣れていたので、一つ溜息をついただけで腕立てを止めた。ほっとかけ声をかけてバーベルを落とし、今まで倒立していた手でそれを受け止める。曲芸、とサンジがぼそっと言うのを、うるせェ、と言い返す。
 ゾロがようやくあぐらをかき、タオルで汗を拭きながらサンジを見上げると、金髪から覗く目が深刻な視線を寄越した。

「俺今年、サンタじゃなくなった」
「・・・へえ」
(出たな)
 ゾロはまたこの季節か、と遠い目をした。遠い目をした先には見えないバラティエがあり、その中の高すぎるコック帽のゼフがいる。厳しく、愛情深く、コックの育成はお手の物であっただろうサンジの育ての親は、子供の養育にはどう見ても不慣れそうであった。おかげでゾロは毎年クリスマスになると、真剣にサンタになっているサンジの話をそれなりに真剣に聞いてやらなくてはいけなくなる。

(何で俺はあんとき寝ちまわなかったんだ)
 いくら後悔しても遅い。あれはいつだったかのクリスマスイブの夜だった。チョッパーの誕生日パーティーが終わった後、酔い潰れた面々を男部屋に放り込み、必然的に自分しか見張りのできる人間がいなかったので、ゾロは酒を一本持って見張り台に上った。
 いつもなら適当に眠くなってどこかで寝始めるのだが、その日に限って特別眠くならず、ぐいぐいと酒を呷っていたら、いきなり現れたのだ。サンタが。

『な・・・』
『コラてめェ!何起きてんだ!』
 見張りで起きていて怒られたのは初めてだった。それよりも全身赤い衣装に身を包み、そんな白いひげの生えている年代の仲間はいないはずの船で、ふっさふさのひげに顔を埋もれさせた仲間もどきが現れて驚いた。
 第一声ですぐにコックであると知れたが、しばらく口を開けたまま閉じることができなかったゾロの前にサンジは見張り台の柵を超えて降り立ち、きょろきょろと左右を見回した。
『まったくお前・・・靴下も用意してねェじゃねェか』
 サンジは不満げに言うと、赤と緑のしましまの靴下を大きなポケットから取り出し、ゾロの足元に置いた。そこにいそいそと一升瓶を詰め、分かってると思うがあいつらに言ったら承知しねェぞ、と残して立ち去ろうとした。一連の流れを呆然と見詰めていたゾロは、赤い帽子に隠れた金髪が見えなくなる寸前、我に返った。
『いや、待て!』
『何』
『お前・・・何してんだ』
 一体何を聞いてるんだこいつは、という顔でゾロを見たサンジは当たり前のことのように答えた。
『見て分かるだろ。プレゼント配ってんだよ』
『・・・何で』
『お前大丈夫か?今日はクリスマスイブだぜ』
『そうじゃねェよ!何でお前がサンタの格好してプレゼント配って・・・でっ!』
 言い終わる前に、声がでけェ!と足が飛んできた。
『お前もしかして知らないのか?』
 いつまでも何でどうしてを繰り返すゾロに、サンジはようやく説明してくれた。
 船には船サンタが一人いること。
 船サンタは主に年長者がなること。
 船サンタは原則として秘密裏に任務を遂行しなければならないこと。

 だから年長である自分がこの船の船サンタなのだ、とサンジは言った。いや俺はお前とタメのはずだが、とゾロが言うと、俺のが八ヶ月と一日年上だ、と勝ち誇ったようにゾロを上から見下ろした。上背も横幅も自分の方が一応大きいのに、どうしてこのコックはこうも上から目線が得意なのかと思う。
 ともかくこの船にはサンジというサンタがおり、クリスマスになるとゾロはルフィやウソップたちと並列に子供扱いされる。怒るよりもサンジの脳みその単純さに哀れを感じているが、内心のところ、わりと満更でもない。一升瓶をはかされてぴちぴちになった靴下の中には、普段のものより小さい猪口が二つ入っているからだ。きっと今年も入っているだろう、と分かっていても実際その猪口を見ると顔が緩む。二十五日が過ぎるとサンジは何食わぬ顔をして、プレゼントもらったか、と近寄ってくるのだ。ゾロから見たらそんな姿、どう考えても見えない靴下に入っているとしか思えない。なので正しく、おうもらった、と返事をする。それが毎年のクリスマスだ。


「おい、聞いてねェだろてめェ」
「あ?」
すっかり今年のクリスマスに思いを馳せていると、いつの間にかしゃがみ込んでいたサンジが柄の悪い目つきで睨んできた。こんなクリスマス直前に怒らせてはもったいない。
「聞いてる。お前がサンタじゃなくな・・・アァ?!」
ようやくゾロにとってもそれが一大事であることに気がついた。あのプレゼントがないのは惜しすぎる。
「そうだ、ようやく分かったか。だからお前の協力がいる」
「・・・・・・おお・・・?」
何かがまたずれているようだが、クリスマスプレゼントのためなら全面的に協力する気持ちだ。サンジが真剣なのにつられ、ゾロも姿勢を正す。
 しかし。
「――――――――――」
厳かに下された指令に、ゾロはへたりと首をうなだれさせた。



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次で終わる予定です。多分。
最近何だか無性にブルックが好きです。 
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